IETF 126 CCWG セッションまとめ(スライド+録画文字起こし)— Hackathon / BBR / SCReAMv2 / SEARCH / Firefox slow start 評価 / C4 / NDTC

Summarized by @unasuke with Claude on 2026-08-07 12:08:59 UTC

CCWG @ IETF 126 セッションまとめ

2026年7月21日(火)14:00–16:00 CEST、ウィーン。Chairs: Reese Enghardt / Eric Kinnear。
出典:公開スライドおよび録画の文字起こし。


1. Hackathon報告:輻輳制御とキュー管理の評価

Mohit P. Tahiliani / Abhyuday Hegde(NITK Surathkal)、Vishal Kamath(リモート)

短縮開催となったHackathonで、修正後の3目標すべてを完了。

議論

2. Hackathon報告:L4S Interop

Greg White(CableLabs) ※TSVWGと同一スライド

3. BBR(WG文書)

Ian Swett — draft-ietf-ccwg-bbr-06

2024年10月にWG採択、Experimental RFCを目標。

-05→-06の変更

Precautionary Bandwidth Probing の要点

実装状況

実装 状況
Linux TCP BBRv3 -06と一致。mainlineへのアップストリーム作業中。PBP実装済み
Google Quiche (Chromium) v2コードからv3を全面書き直し中(簡素化・旧実験の除去)。PBP未実装
Meta mvfst 名称は bbr2 だが大半の変更を反映。ProbeRTT間隔10秒の実験、ack_phase不使用。PBP未実装

未解決の課題

出版の基準(Experimental想定):QUIC/TCP双方での大規模デプロイ複数、両方の実装が従える記述、BBR同士の公平共有とReno/Cubicとの共存。「BBRを無限に進化させ続けるより、デプロイ経験を伴う良いドラフトを妥当な時期に出す方がよい」との方針が示された。

議論

4. SCReAM v2(WG文書)

Magnus Westerlund(Ingemar Johansson代理)— draft-ietf-ccwg-rfc8298bis-screamv2-01

復習:cwndではなく ref_wnd を使い、bytes in flightが ref_wnd を上回ることを許す(大きなビデオフレームの送信側キューイングを避けるため)。輻輳から時間が経てば乗算的増加、ロス・ECN/L4S・推定キュー遅延増加のいずれでも減少。パケットペーシングは target_bitrate の約150%(非輻輳時はさらに引き上げ)。

Individual-07 → WG-01 の変更

オープンな論点:RFC 9743に基づく評価は別文書か本文の付録か/全ケースで評価が必要か(アルゴリズム設計から理論的に論じられる部分もある)、レートポリサーの検出と対処を続けるべきか、L4S非対応時にSCReAMをより保守的にすべきか。GoogleがSCReAM + L4SのWebRTC評価に協力中で、年内に結果が出る見込み。

議論

Jae Chung — draft-chung-ccwg-search(SEARCH = Slow start Exit At Right CHoke point)

前回のMirjaの質問(なぜRTTではなくgoodputを使うのか)への回答としての信号品質の分析と、exit時のドレイン導入の2点が更新内容。

スロースタート終了信号の品質

Exit時のドレインフェーズ(新規)

進行中の作業:SNRに基づくcwnd成長率の適応化。SNRが低い=パスがまだ埋まっていないので2倍より速く増やしてよく、SNRが良い=輻輳点に近いのでHyStart++のように緩やかにする。

議論

Poll:「この文書を読んだか」「実装した/実装に関心があるか(この変更が入れば実装する、も含む)」の2問を実施。Chairsは複数あるスロースタート提案の著者と調整を続ける方針で、この場での採択を諮るものではないと明言。

スロースタートをWGで扱うことへの疑問(Huitema):SEARCHが取り組んでいる本質的な問題は、スロースタートと輻輳回避の間の不連続。高BDPパスでは輻輳回避が極めて非応答的で、一度ウィンドウを割ると回復に膨大なRTTがかかる。だから「早く抜けすぎること」の代償が大きくなる。初期フェーズで発見を済ませ、その後はほとんど変えないという設計自体が根本的に良くない——ネットワーク状況は常に変わる前提を置くべき。Chairが「輻輳回避がもっと応答的なら、抜ける地点はそこまで重要でなくなる、ということか」と確認し、Huitemaも同意。一方で、そもそも終了前に終わる接続が相当数あること、過去のIETFで「適切なレートへの到達を改善するとユーザ体験が有意に改善する」データが示されたことも指摘された。

Martin Dukeからは、標準化トラック文書としての採択を議論するなら「インターネット規模の実験を行っている者がいるか」を問うべき、とのコメント。

6. Firefox(neqo)でのQUICスロースタート評価

Oskar Mansfeld(Mozilla)

Firefox の QUIC スタック neqo に、既定の輻輳イベントベース方式(Classic/Control)に加えて SEARCH と HyStart++ を実行時切替可能な枠組みで実装し、Desktop Nightly / Beta、そして Release で 2026年7月2日〜19日にA/B/C実験を実施。直前のDukeのコメントに対する、まさにインターネット規模の実験にあたる。

データセットの構成

なぜヒューリスティックが効かないのか

Release全体(ヒューリスティックなし)の終了時ssthreshは p50 = 20,000、p25 = 14,000、p5 = 8,600バイト。IW10 なら初期ウィンドウで既に輻輳を観測していることになり、ヒューリスティックが働く余地がない。

メトリクス

コミュニティへの質問:他者の接続パターン(cwndを成長させない割合、スロースタート終了率)と一致するか。8,600〜20,000バイトという低ssthreshの輻輳イベントが多いのはなぜか。

議論

会場からは、Firefoxが送るのは少数のGETリクエストが中心なので大半の接続がスロースタートを抜けないのは自然、との確認もあった。Mozillaからは他ブラウザベンダの数値との比較を見たいとの希望が示された。

7. C4(Christian's Congestion Control Code)

Christian Huitema — draft-huitema-ccwg-c4-spec / -design / -test(いずれも -04)

目的は、特にメディアアプリケーションに適した高応答性の輻輳制御。帯域推定が小さすぎればフレームを十分速く送れず応答が悪化し、大きすぎればフレームを過剰に送って優先度逆転を招くため、その均衡を狙う。

テスト結果の提示方法の改善(前回のフィードバックへの対応):3,000シナリオ×各100回の実行について、平均最悪側90パーセンタイルの実行時間/レイテンシ(マイクロ秒、小さいほど良い)を併記し、同一テストをBBRやCubicで実行した結果と比較する形式に変更。ドラフト間の比較も可能。100回試行のため90%であり、将来1,000回に増やせば99%も出せる。結果としてC4はごく一部を除きほぼ全テストで既存手法を上回っているとの報告。

状態機械の変更

次のステップ:セルラー網(帯域が常時変動する条件)、RED および RED+ECN のシミュレーション追加。バッファは現在2〜4×BDPで設定しており、bufferbloatを試すには20×BDP程度のケースが必要。C4同士/C4対BBRの競合シナリオでレイテンシを下げること——現状の公平性は輻輳時のバックオフで達成されており、少なくとも1 BDP分の遅延を伴う状態で均衡してしまう。Cubic相手には原理的に困難だが、レートを測るタイプの輻輳制御が相手なら改善できるはず。加えて、シミュレーションだけでなく実ネットワークでのテスト展開へ。

時間切れのため、Neal Cardwellのコメントはチャットに回された。

8. NDTC(時間切れで未実施)

Paul-Louis Ageneau ほか(Netflix)— draft-ageneau-ccwg-ndtc-02

アジェンダには5分枠があったがセッション時間内に発表されず、スライドのみ公開。内容は、高ビットレート・リアルタイム・インタラクティブ映像向けのレート適応/輻輳制御で、高速な立ち上がり・低遅延・低ロスが特徴。中核のヒューリスティック FDACE(Frame Dithering Available Capacity Estimation) はペーシングされたフレーム自体をプローブとして利用可能帯域を推定し、フレームの適時到着を確保しつつ自己誘発輻輳を先回りして抑える。AIMDロジックと組み合わせて従来のロス信号にも反応し、L4Sとも互換。Netflixのクラウドゲーミングサービスで実際に使用されている。-02では ecn_average の誤記、SLOPE計算での共分散チェック欠落、ECN条件でのAIMD減少抑止の誤り、MIN_LENGTH = MIN_TARGET/2 と比較すべき箇所の記述誤りを修正。Hackathonでも L4S 検証を継続し、パケット遅延変動約2msという結果が示されている。


セッション全体を通した論点

いくつかのテーマが発表をまたいで繰り返し現れた。